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利休百首

001. その道に入らむと思ふ心こそ 我が身ながらの師匠なりけれ
何事でもその道に入り、それを学ぼうという気持ちが、その人自身の心の中にいる立派な師匠です。
002. 習ひつつ見てこそ習へ習はずに よしあしいふは愚かなりけり
人のことを批評するなら先ずその対象になるものを自ら学ぶ必要がある。それを学ぶこともしないで、口先だけで批評することは愚なことです。人は納得しません。
003. こゝろざし深き人にはいくたびも あはれみ深く奥ぞ教ふる
熱心な人には親切に教えるべきです。深く熱心に教えましょう。
004. はぢを捨て人に物とひ習ふべし 是ぞ上手の基なりける
恥を捨てて、知らない事を素直に、先生や先輩に教えてもらいましょう。それが物事の上達の基礎になります。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ですね。
005. 上手にはすきと器用と功積むと この三つそろふ人ぞ能くしる
何事でも上手になる為には、楽しく、要領よく、こつこつとするの大切です。
006. 点前には弱みをすてゝただ強く されど風俗いやしきを去れ
点前は力を抜きすぎてもいけないし、力が入りすぎてもぎこちない。弱すぎず強すぎない点前が良い。
007. 点前には強みばかりを思ふなよ 強きは弱く軽く重かれ
軽い物を持つ時は重い物を持つち、重い物を持つ時は軽い物を持つような気持ち丁寧にするのがいいです。
008. 何にても道具扱ふたびごとに 取る手は軽く置く手重かれ
道具が重いからといって力を入れて持つと、人の眼からは、いかにも重そうに見えます。そのように感じさせないように軽いものを持ち上げるような気持ちで持ち上げましょう。それとは逆に、茶碗など軽い道具を持ち上げる時は、簡単に持ち上げてしまうと軽々しく扱っているように見えてしまうので、軽い道具を持つときは少しゆっくりと、そして手をはなすときも、ゆっくりとはなしましょう。
009. 何にても置き付けかへる手離れは 恋しき人にわかるゝと知れ
道具を置いて手を離す時は、恋しい人と離れる時のような余韻を持ちましょう。
010. 点前こそ薄茶にあれと聞くものを そそうになせし人はあやまり
薄茶の点前がしっかり出来ていないのでは、濃茶も点てられないはず。何事でも基本がもっとも大切です。
001. 濃茶には点前をすてゝ一筋に 服の加減と息をもらすな
濃茶はお服加減が大切です。点前の上手下手は考えず、下っ腹に力を入れ呼吸を整えながら加減良く濃茶を練る事に集中しましょう。
012. 濃茶には湯加減あつく服は尚ほ 泡なきやうにかたまりもなく
濃茶を点てる時、湯は熱めで、茶を入れる前に茶碗をよく拭きます。初めの練り方を十分にしましょう。泡やダマできないように。
013. とにかくに服の加減を覚ゆるは 濃茶たびたび点てゝ能く知れ
濃茶を加減良く点てるためには、何度も何度も反復練習が必要です。
014. よそにては茶を汲みて後茶杓にて 茶碗のふちを心して打て
茶杓を打つ時や栓打ちをする時は道具を傷つけないように十分注意しましょう。
015. なかつぎは胴を横手にかきて取れ 茶杓は直におくものぞかし
中次は蓋が深いので胴の横に手をかけて持ちます。茶杓を置く時はまっすぐに置きます。道具にあった使い方をしましょう。
016. 棗には蓋半月に手をかけて 茶杓を円く置くとこそしれ
お棗は蓋と手が三日月形の空間ができるように持つように。茶杓を円く置くとは、お棗の蓋は丸みがあるので、まず茶杓の先を蓋の向うにおいて、次に手前の方におろすという意味。このように置くとお茶杓が安定し、見た目も美くなります。
017. 薄茶入蒔絵彫りもの文字あらば 順逆覚え扱ふと知れ
薄茶入に蒔絵、彫物、文字などがある場合は、蓋と胴の模様がちぐはぐにならないように注意しましょう。
018. かたつきはなかつぎとまた同じこと 底に指をばかけぬとぞ知れ
肩衝を持つ時は中次ぎと同様に、胴の横から持ち、底に手を廻さないように。
019. 文琳や茄子丸壺大海は 底に指をばかけてこそ持て
文琳、茄子、丸壺、大海など小型の茶入を持つ時は底に指をかけて持ちましょう。
020. 大海をあしらふ時は大指を 肩にかけるぞ習ひなりける
大海の場合は、左手の親指を茶入の肩(蓋)にかけて持ちましょう。
021. 口ひろき茶入の茶をば汲むといふ 狭き口をばすくふとぞいふ
大海、鮟鱇などの口広の茶入の茶は汲む、その他の茶入の茶はすくうと言います。
022. 筒茶碗深き底よりふき上がり 重ねて内へ手をやらぬもの
指や手先が茶碗の内側に触れていまわないように、筒茶碗を拭く時は先ず底を拭いてから、その後に縁を拭きましょう。
023. 乾きたる茶巾使はゞ湯はすこし こぼし残してあしらふぞよき
茶巾の湿りが少ない時には茶筅通しの湯を捨てる時に少し残しておき、その湿り気が茶巾に回るようにして拭きましょう。
024. 炭置くはたとへ習ひにそむくとも 湯のよくたぎる炭は炭なり
少々形が悪くても、よく湯がたぎるように炭をつぎましょう。湯がたぎらないと茶を点てれません。
025. 客になり炭つぐならばそのたびに 薫物などはくべぬことなり
亭主に所望され炭をつぐ時は絶対に香をくべてはいけません。香をくべるのは、亭主の仕事。
026. 炭つがば五徳はさむな十文字 縁をきらすな釣合を見よ
炭をつぐ時は五徳を挟むと風通りが悪くなり、炭と炭の縁を切れば火のめぐりが悪くなるのでしないように。
027. 焚え残る白炭あらば捨て置きて また余の炭を置くものぞかし
初炭に用いた枝炭があっても、そっとしておきましょう。それはそれで趣があります。
028. 崩れたるその白炭をとりあげて またたきそへることはなきなり
枝炭は置くときにくずれたり、また燃え残ってたとしても置き直さないで景色としましょう。
029. 炭おくも習ひばかりにかかはりて 湯のたぎらざる炭は消え炭
炭は下火の多少等で置き方や数を変えなければなりません。教えられた通りに置いても火がおこらず、お湯がたぎらない事もあります。お湯がたぎらないような炭は、火のおこっていない炭に等しい。炭は火がおこり、湯がたぎるように置きましょう。
030. 風炉の炭見ることはなし見ぬとても 見ぬこそ猶も見る心なれ
風炉の場合、美しくされた灰形が崩れるような事をしない為に初炭では拝見をしないこと。後炭の時に拝見しましょう。
031. 客になり風炉の其うち見る時に 灰崩れなむ気づかひをせよ
風炉の灰はとても扱いが難しいものです。客は亭主の努力を察して風炉を拝見する時は灰形が崩れないように静かに心配りをしましょう。
032. 客になり底取るならばいつにても 囲炉裡の角を崩し尽すな
炉で廻り炭(七事式)の場合、火のめぐりが悪くなるので囲炉裏の四隅の灰を崩さないようにしましょう。
033. 墨蹟をかけたる時にはたくぼくを 末座のほうへ大方はひけ
墨蹟(高僧が、禅を書いた掛物の事)をかける時には啄木(掛物の巻き緒)を必ず下座の方に引いておきましょう。
034. 絵の物を掛ける時にはたくぼくを 印ある方へ引きおくもよし
絵の物をかける時には啄木(掛物の巻き緒)を印のある方へ引いておいてもいいです。
035. 絵掛けものひだり右向きむかふむき 使ふも床の勝手にぞよる
人物画の場合、向かって左向きは人物の背が勝手付になるように掛けましょう。床によって掛けるものを選びましょう。
036. 掛物の釘打つならば大輪(おおわ)より 九分下げて打て釘も九分なり
掛物の釘を打つ場合には大輪(天井の回り縁)より約27㎜下の壁に打ちましょう。竹釘の皮の面を上にしてやや斜め上向きに約27㎜の長さを残して打ちましょう。
037. 床にまた和歌の類をば掛るなら 外に歌書をば荘らぬと知れ
道具の取り合わせは重複を避けなさい。和歌を掛ければ歌書を飾らないほうがいいです。
038. 外題あるものを余所にて見るときは 先づ外題をば見せて披らけよ
由緒のある掛物、天皇の書かれた物等を床に掛ける時は軸飾り(掛物を巻いたまま床に飾り、外題を拝見)してから亭主に床に掛けてもらいましょう。
039. 品々の釜によりての名は多し 釜の総名鑵子(かんす)とぞいふ
釜は形やその他の理由から様々な名称がありますけど、総称すると鑵子と言います。
040. 冬の釜囲炉裏縁より六七分 高くすゑるぞ習いなりける
炉縁より釜の口が2㎝の高さで釜を据えると、柄杓が扱いやすい高さですよ。
041. 姥口は囲炉裏ふちより六七分 ひくくすゑるぞ習いなりける
姥口の場合は胴の上部に柄杓をかける為、炉縁より2㎝低く釜を据えましょう。
042. 置き合せ心をつけて見るぞかし 袋は縫目畳目に置け
置き合わせは非常に難しいので形にとらわれず袋の縫い目を畳の目に合わせて置きましょう。
043. はこびだて水指おくは横畳 二つ割にてまんなかに置け
運び点てで水指を置く位置は畳の横幅を二つ割りにした中央ですよ。
044. 茶入又茶筅のかねをよくも知れ あとに残せる道具目当てに
茶入や茶筅を元の位置に戻す時は、別の器物を目印にして置きましょう。
045. 水指に手桶出さば手は横に 前の蓋とりさきに重ねよ
手桶水指の場合、置きあわせは手を横一文字にし、蓋は両手で前を取り、向こうの蓋に重ねましょう。
046. 釣瓶こそ手は竪におけ蓋取らば 釜に近づく方と知るべし
釣瓶の場合、手を縦に置き、釜に近い方の蓋を取り、向こうの蓋に重ねましょう。
047. 余所などへ花をおくらば其花は 開きすぎしはやらぬものなり
花を贈る時には、半開きや蕾のついた枝(開ききっていない花)を贈るべきです。もって帰ったとき、花が開ききってしまいます。
048. 小板にて濃茶を点てば茶巾をば 小板の端におくものぞかし
風炉の板敷を使う濃茶の点前は茶巾を右前角に置きましょう。
049. 喚鐘は大と小とに中々に 大と五つの数を打つなり
喚鐘は大小中中大と5点打ちます。銅鑼は大小大小中中大は7点打ちます。
050. 茶入より茶掬うには心得て 初中後すくへそれが秘事也
茶入より茶すくうには初めは少し、次は少し多め、後はたくさん入れましょう。
051. 湯を汲むは柄杓に心つきの輪のそこねぬやうに覚悟して汲む
湯を汲む時は柄杓の月の輪(合と絵が繋ぎ合った所)がゆるまない様に注意して汲みましょう。
052. 柄杓にて湯をくむ時の習には 三つの心得あるものぞかし
柄杓の扱いの心得。1. 十分に汲まず、9分目まで汲むようにする。2. 湯は底、水は中程を汲むようにする。3. 油柄杓(だんだん上にあがる)をしないようにする。
053. 湯を汲みて茶碗に入るヽ其時の 柄杓のねぢは肱よりぞする
湯を汲んで茶碗に入れる時は手首を回すのではなく、肘より回しましょう。柄杓の合が安定するから、湯がこぼれません。
054. 柄杓にて白湯と水とを汲むときは 汲むと思わじ持つと思わじ
湯や水を汲もうと思わないように。柄杓を持とうと思わないように。手首より肘に注意しましょう。
055. 茶を振るは手先を振ると思ふなよ 臂よりふれよそれが秘事なり
薄茶を点てる時は手先を振ると思わないで肘より振ると思いなさい。
056. 羽箒は風炉に右羽よ炉の時は 左羽をば使ふとぞしる
陰陽の調和から、風炉は陽なので右羽の陰、炉は陰なので左羽の陽を使いましょう。
057. 名物の茶碗出でたる茶の湯には 少し心得かはるとぞ知れ
名物の茶碗や由緒のある茶碗を扱う時は、普通の扱いをせずに、古袱紗に乗せ、紙で拭かずに、茶巾で拭くようにしましょう。
058. 暁ちも行燈に 夜会などには短檠を置け
暁は暁は数寄屋のう茶事の事で、夜の明け切らぬころから催します。茶事が進行するうちに、と明けが近くなって、あたりが陽になるから、燈火は反対に陰の行燈を使います。
夜会は夜咄の茶事の事で、まだ暮れて間もないころから始まって、夜にかかる。
いいかえると、陽から陰に移るので、燈火は。陽の短檠を使います。
059. ともしびに陰と陽との二つあり あかつき陰によひは陽なり
茶の湯では、陰陽の関係をよく言います。道具にしても水に縁のあるものは陰、茶入のようなものは陽と定められています。灯火にも陰と陽の区別があり、時刻にも陰と陽がある。
060. 燈火に油をつがば多くつげ 客にあかざる心得と知れ
客へのもてなしの心得。燈火を暗くしては客が居辛くなるので配慮しましょう。
061. いにしへは夜会などには床の内 掛物花はなしとこそきけ
「いにしへ」とは、利休以前のこと。利休居士以前の夜会には掛物・花は使いませんでした。
062. 炉のうちは炭斗瓢柄の火箸 陶器香合ねり香としれ
炉の時は炭斗は瓢、柄付の火箸、陶器の香合、ねり香です。
063. 風炉の時炭は菜籠(さいろ)にかね火箸 ぬり香合に白檀をたけ
風炉の時は炭は菜籠に入れ、金属製の火箸、塗物の香合、白檀をたきましょう。
064. いにしへは名物などの香合へ 直ちにたきもの入れぬとぞきく
名物・拝領物の香合の場合、汚したり傷つけたりしないように下に紙等を敷いて香を入れましょう。
065. 蓋置に三足あらば一つ足 まへにつかふと心得ておけ
三つ人形などの本足の場合、一つだけ他とは違うものが前なので、自分のほうに向くように扱いましょう。
066. 二畳台三畳台の水指は まづ九つ目に置くが法なり
台目畳の時に水指は客付の畳から畳目が9ツ目の所位の所に置きましょう。
067. 茶巾をば長み布はば一尺に 横は五寸のかね尺としれ
茶巾は曲尺で長さ30㎝、横15㎝の大きさである。
068. 帛紗をば竪は九寸よこ巾は 八寸八分曲尺にせよ
袱紗は曲尺で縦27㎝、横26㎝の大きさである。
069. うす板は床かまちより十七目 または十八十九目におけ
薄板(床に飾る花入の下に敷く板)は床框(かまち)より奥へ畳目で17から19目に置きなさい。床の大小、花入によって変えましょう。
070. うす板は床の大小また花や 花生によりかはるしなしな
花入を置く位置は薄板の位置によって定まります。
071. 花入の折釘うつは地敷居より 三尺三寸五分余もあり
花入の折釘を打つ時は地敷居より約1mの高さに打ちなさい。
072. 花入に大小あらば見合わせよ かねをはづして打つがかねなり
花入の大小・床の高低で釘の位置を変えましょう。
073. 竹釘は皮目を上に打つぞかし 皮目を下になすこともあり
竹釘は皮目を上に打つのが原則であるが、不便な時は下にしてもいいですよ。
074. 三つ釘は中の釘より両脇と 二つわりなるまんなかに打て
横幅の広い大横物を掛ける時は真ん中の釘と端の中間に打ちます。掛け緒は中央に掛け、次ぎに左を掛け、次ぎに右を掛け、最後に中央をはずします。
075. 三幅の軸をかけるは中をかけ 軸さきをかけ次は軸もと
三幅の軸をかける時は中をかけ、軸先をかけ、次は軸もとを掛けます。
076. 掛物をかけて置くには壁付を 三四分すかしおくことときく
掛物を掛けて置く時には壁にぴったりつけずに、9㎜程度離しておかないと壁や掛物を損じてしまいます。
077. 時ならず客の来らば点前をば こころは草にわざをつヽしめ
不意の来客が来た時は点前は十分謹んで丁寧にもてなしましょう。
078. 花見よりかへりの人に茶の湯せば 花鳥の絵をも花も置くまじ
花見から帰ってきた人が茶会に来る時は花や鳥の絵や花を入れても面白くない。
079. 釣舟はくさりの長さ床により 出船入船浮船と知れ
舟形の花入を吊るには床によって光線のくる方向へ向けたり、その逆へ向けたり、床の上に鎖を束ね、小さな錨を置き、花入をそれにもたれかけさせましょう。
080. 壺などを床に飾らん心あらば 花より上にかざりおくべし
壺等を床に飾る時には花入より上座に花をかざりましょう。
081. 風炉濃茶必ず釜に水さすと 一筋に思ふ人はあやまり
湯の温度は茶の精気によって変えなさい。精気の衰えた茶に熱湯を注いではおいしくない。
082. 右の手を扱ふ時はわが心 左の方にあるとしるべし
右の手を扱う時には左手がおろそかになりやすいので注意しましょう。点前に一部の隙もたるみもないように、という心構え。
083. 一点前点るうちには善悪と 有無の心をわかちをも知る
一点前を点る間は無我夢中にならなくてはならない。
084. なまるとは手つヾき早くまたおそく ところゞのそろわぬをいふ
むらのある点前をしてはいけません。
085. 点前には重きを軽く軽きをば 重く扱う味ひをしれ
軽い物を持つ時は重い物を持つ気持ちで、重い物を持つ時は軽い物を持つ気持ちでしなさい。
086. 盆石をかざりし時の掛物に 山水などはさしあひとしれ
盆石とは、盆の上に山水を写したもの。盆石を飾る時には山水の絵は掛けないこと、床の上に山水が重なることになる。
087. 板床に葉茶壺茶入品々を かざらでかざる法もありけり
板床に葉茶壺、茶入等の品々を飾るべきではないが、飾る時は紙等を敷きなさい。
088. 床の上に籠花入を置く時は薄板などはしかぬものなり
籠花入を置く時は薄板等は敷かないように。
089. 掛物や花を拝見する時は 三尺ほどは座をよけてみよ
掛物や花を拝見する時は1m程離れて見ましょう。
090. 稽古とは一より習ひ十を知り 十よりかへるもとのその一
稽古とは繰り返す事である。十まで習ったらそれで終わりではない。
091. 茶の湯をば心に染めて眼にかけず 耳をひそめてきくこともなし
奥義とは自分で求め、自分で得るものである。
092. 目にも見よ耳にもふれよ香を嗅ぎて ことを問いつゝよく合点せよ
六感をすべて使って覚えなさい。
093. 習ひをばちりあくたぞと思へかし 書物は反古腰張にせよ
書物に頼っているうちは、妙境に達する事はできない。書物には要の事やコツはあえて書いていない。それは口伝で伝える。
094. 茶を点てば茶筅に心よくつけて 茶碗の底へ強くあたるな
茶を点てる時には茶筅によく注意して茶碗の底に強く当たらないようにしなさい。
095. 水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝 柄杓と心あたらしきよし
水、湯、茶巾、茶筅、箸、楊枝、柄杓、心は新しい清浄なものがいいです。これは、客に対するご馳走であります。
096. 茶はさびて心はあつくもてなせよ 道具はいつも有合にせよ
茶は質素で心に満足を与えるようにもてなします。道具は身分相応なものでいいです。
097. 釜一つあれば茶の湯はなるものを 数の道具をもつは愚な
茶は道具で点てるものではなく、心で点てるものである。
098. かず多くある道具をも押しかくし 無きがまねする人も愚な
道具は使うからこそ道具としての価値がある。使わない道具は道具としての価値が無い。
099. 茶の湯には梅寒菊に黄葉み落ち 青竹枯木あかつきの霜
茶の湯では陰陽の調和が重要である。
100. 茶の湯とはたヾ湯をわかし茶をたてヽ のむばかりなる事と知るべし
言うは易し、行うは難し。
101. とよりもなきいにしへの法なれど 今ぞ極る本来の法
茶の湯とはただの遊びではなく、心を養うというのが茶の本当の意味です。
102. 矩作法守りつくして破るとも 離るヽとても本を忘るな
規則は守らなければならないが、例え破ろうとも離れようとも本質を忘れず、臨機応変にしなさい。規律を守り背かずに生きるのはよいが、眼前の事実を前にしてそれらを飛び越えた最良の選択を探し出しなさい。
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